あとがき

　ここに一書を書き終えて、しみじみ師恩をおもうことである。田邊古邨先生、大森曹玄老師、松本洪先生、藤原楚水先生、山田担雪先生の御高恩に合掌し萬謝する次第である。

　昭和五十一年、日本教育書道藝術院の大渓院長から月刊誌への寄稿を依頼された。先師古邨翁は平生「卒業生の仕事には協力しよう」といわれていたし、私もそのつもりだったので、以来毎月原稿を書き送った。古邨翁の玉稿もしばらく連載された。

　拙文を寄せて一年ほど経ったとき、院長は、これはやがて単行本にして世に出したいと言い出した。それと前後して幾人かの読者から手紙がとどき、「是非一冊にまとめて欲しい」という要望があった。そういう声はその後もいくたびかとどいた。実のところ私自身、書についての考えをまとめたい念願もあったので、また新たな希望を以て書き綴ったのであった。このようにして八年の歳月が流れた。その間の文章は相当の量にのぼった。いよいよ出版の運びとなり、今まで書いたものの中から抜き出して書き直し、さらに新しく執筆したものを加えて一書とした次第である。

　書中の図版は、私の所持する数点を除いては、図録、書跡集等にすでに印行されたものを掲出させていただいたが、何卒斯道のためとして御諒恕を願いたい。

　本書出版に当って、大渓院長、鈴木尚男氏に多大の尽力を賜った。また出版を快諾してくれた日貿出版社専務、豊島宗七氏に大へんお世話になった。ここに三氏に対し厚く御礼申し上げる。なお原稿の整理、校正等にお骨折りいただいた橋爪、沢幡の両氏に謝意を表したい。

　昭和五十九年十二月十九日

図版出典一覧

図一、二、三、四　平凡社「書道全集」

図五、六、七、八　二玄社「書跡名品叢刊」

図九、十　　　　　佐賀鹿島印刷ＫＫ印行物

図十一　　　　　　平凡社「書道全集」、真珠庵蔵

図十二　　　　　　畠山記念館印行物、同館蔵

図十三　　　　　　求竜堂「墨跡大観」、野村家蔵

図十四　　　　　　平凡社「太陽」、酬恩庵蔵

図十五　　　　　　平凡社「書道全集」、真珠庵蔵

図十六　　　　　　「大徳寺真珠庵名宝展図録」

図十七　　　　　　松ケ丘文庫「至道無難禅師道歌集」

図十八　　　　　　「禅文化」、金剛院蔵

図十九　　　　　　著者蔵

図二十　　　　　　竜吟社「白隠和尚全集」、竜沢寺蔵

図二十一　　　　　筑摩書房「白隠」、永青文庫蔵

図二十二　　　　　竜吟社「白隠和尚全集」、正宗寺蔵

図二十三、二十四、二十五　　毎日新聞社「高僧の書」

図二十六、二十七、二十八、二十九、三十　「良寛図録」

図三十一、三十二　東京国立博物館印行図録、同館蔵

図三十三　　　　　「墨美」、東福寺蔵

図三十四　　　　　東京国立博物館印行図録、同館蔵

図三十五　　　　　根津美術館印行図録、同館蔵

図三十六　　　　　五島美術館印行図録、同館蔵

図三十七　　　　　「墨美」

図三十八、三十九　「墨美」、東京国立博物館蔵

図四十　　　　　　二玄社「手紙」

図四十一　　　　　筑摩書房「千利久」、不審庵蔵

図四十二　　　　　小学館「茶道聚錦」

図四十三　　　　　平凡社「俳人真跡全集」

図四十四　　　　　出光美術館印行物、同館蔵

図四十五　　　　　平凡社「俳人真跡全集」

図四十六　　　　　平凡社「書道全集」(旧)

図四十七　　　　　アルス「子規全集」、国会図書館蔵　

図四十八　　　　　教育書籍「会津八一の書翰」

図四十九　　　　　二玄社「池大雅」

図五十　　　　　　「墨美」、自性寺蔵

図五十一　　　　　東博「日本の山水展図録」

図五十二　　　　　二玄社「池大雅」

図五十三　　　　　西東書房「大雅堂書画帖」

図五十四　　　　　故宮博物院「中国文物図記」

図五十五　　　　　聖紀書房「東洋の道と美」

図五十六　　　　　二玄社「書跡名品叢刊」

図五十七　　　　　岩波「中国詩人選集」

図五十八、五十九　二玄社「書跡名品叢刊」

図六十　　　　　　香港竜門書店「石濤上人年譜」

図六十一　　　　　阿部コレクション図録

図六十二　　　　　「高島屋鉄斎展図録」

図六十三　　　　　春風館「山岡鉄舟の一生」

図六十四、六十五　著者蔵

図六十六　　　　　平凡社「太陽」

図六十七　　　　　故高坂正顕氏より

図六十八　　　　　著者蔵

◎　参考文献

一　　高村光太郎著　「造型美論」　筑摩書房

二　　高村光太郎著　「美について」　道統社

三　　「高村光太郎の書」　二玄社

四　　「会津八一の書」　中央公論社

五　　「小林秀雄全集」　新潮社

六　　「斎藤茂吉全集」　岩波書店

七　　「子規全集」　アルス

八　　「西田幾多郎全集」　岩波書店

九　　鈴木大拙　「禅と日本文化」　岩波書店

一〇　「言志四録」　岩波書店

一一　竹内敏雄編　「美学事典」弘文堂

一二　大西克礼　「美学」弘文堂

一三　「西田幾多郎遺墨集」　一燈園　燈影社

一四　「日本古典文学大系」　岩波書店

一五　「藝術論集」　朝日新聞社

一六　高山岩男　「場所的論理と呼応の原理」　創文社

一七　桑田忠親　「茶の心」　東京堂

一八　傅　抱石　「石濤上人年譜」　龍門書店(香港)

一九　田辺　元　「正法眼蔵哲学私観」　岩波書店

二〇　ハーバート・リード　「藝術の意味」　みすず書房

二一　唐木順三　「良寛」　筑摩書房

二二　吉野秀雄　「良寛」　筑摩書房

二三　山上次郎　「子規の書画」　二玄社

二四　「ロダンの言葉」　二見書房

二五　西有穆山　「正法眼蔵啓迪」　大法輪閣

二六　橋田邦彦　「正法眼蔵釈意」　山喜房

二七　「白隠和尚全集」　竜呤社

二九　「至道無難禅師集」　春秋社

三〇　講座　「禅」　筑摩書房

三一　ユング「無意識の心理」　人文書院

三二　「全生庵記録抜萃」

三三　「藝術叢編」　世界書局(台北)

三四　大森曹玄　「剣と禅」ほか　二玄社

三五　「藝概」　富晋書社

三六　「虚舟題跋」　台北文化事業股份有限公司

三七　田能村竹田　「山中人饒舌」　松山堂

三八　「日本の禅語録」　講談社

三九　「書道講座」　二玄社

四〇　橋本関雪　「石濤」　中央美術社

四一　「段氏述筆法」　省心書房

四二　山田次朗吉著　「剣道集義」　一橋剣友会

四三　クルト・ブラッシュ　「禅画と日本文化」　木耳社

四四　「良寛詩集」　岩波書店

四五　ポオル・ヴァレリイ　「藝術論集」　筑摩書房

四六　「世界美術全集」　平凡社

四七　「鈴木正三全集」　山喜房

四八　金原省吾　「日本藝術論」　旺文社

四九　「日本文化研究」　新潮社

五〇　「畫法要録」　中華書局

五一　中村茂夫　「中国画論の展開」　中山文華堂

五二　佐藤通次　「身体論」　白水社

五三　川村理助　「体験の生活」　培風館

五四　長坂吉和　「会津八一の書翰」　教育書籍

五五　「文心雕竜」　世界書局

五六　「中国書論集成」　二玄社

五七　馬叙倫　「莊子義証」　商務印書館

五八　神田喜一郎　「墨林間話」　岩波書店

五九　阿部正美　「芭蕉伝記考説」　明治書院

六〇　竹内尚次　「白隠」　筑摩書房

六一　萩須純道　「日本中世禅宗史」

六二　村木弘昌　「釈尊の呼吸法」　柏樹社

六三　加藤周一　「政治と文学」　平凡社

六四　幸田露伴　「骨董」　東京出版

六五　青木正兒　「支那文学思想史」　岩波書店

六六　鈴木虎雄　「支那詩論史」　弘文堂

六七　山中蘭渓　「池大雅」　アトリエ社

六八　尾形　仂　「座の文学」　角川書店

六九　高森碎巌　「自治斎文稿」　松雲堂

七〇　「茶道聚綿」　小学館

七一　「臨済録」　貝葉書院

七二　「無門関」　　　　　〃

七三　「近世禅林僧宝伝」　〃

七四　「金剛経川老誑」　　〃

七五　「居士伝」　津逮堂

七六　「五燈会元」

七七　「碧巌録」

七八　「哲学季刊」

七九　「禅文化」

八〇　月刊「鉄舟」

●その他

著者略歴

一九二一年埼玉生れ。

田邊古邨先生に書法を学ぶ。

松本洪先生につき漢籍研究。

大森曹玄老師に参禅。

鉄舟会理事。「鉄舟」誌編集。

書道同文会理事長。

お茶の水女子大学講師。

東京学藝大学教授。

朝日カルチャーセンター講師。

全日本書写書道教育研究会理事長。

書道一元会副会長。 日本橋三越にて個展。